2026年9月15日、第4回のトバタスペース アカデミーは、九州工業大学の 総合研究1号棟 に集合しました。テーマは 「回路設計体験/打上前試験体験」。前回は缶サットで「衛星をつくる」入口に立ちました。今回は、つくった衛星が 本当に宇宙で動くのかを、打ち上げ前に地上で確かめる ――その「試験」の世界をのぞく回です。講義の合間には、九工大の 超小型衛星試験センター の見学も行いました。
はじめに、アカデミー長の 布施 哲人 先生から、この日の流れについて軽くイントロ。
続いて、九州工業大学で実際に衛星を開発している学生から、「衛星プロジェクトとは?」の紹介がありました。九工大を含む世界中の大学や研究室では、本当に宇宙へ打ち上げることを前提にした本物の人工衛星 が学生の手でつくられています。主流は 1辺10cm の立方体を基本単位とする 超小型衛星(CubeSat)。小さくても、太陽電池や通信機を積んだ立派な衛星です。
第2回でアカデミー生も取り組んだ 「ミッション定義」 の話も。ミッションがあいまいだと、必要な機器も、衛星のサイズも、構造も決まらない。大学の衛星プロジェクトでも、出発点は同じでした。
— 超小型衛星試験センターへ。
ここで講義室を出て、いよいよ超小型衛星試験センターの見学です。廊下には、これまでに九工大で開発されてきた超小型衛星のモデルがずらりと並びます。
試験室では、ロケットで打ち上げられるときの激しい揺れを再現する 振動試験装置、宇宙の真空や高温・低温を再現する 真空試験装置 を実際に見学。宇宙に出てしまえば、衛星は修理できません。だからこそ、打ち上げ前にあらゆる環境を地上で再現し、壊れないことを確かめておく。九工大には、超小型衛星のための試験設備がここまで充実していることが説明されました。
— 回路は、データシートから始まる。
見学を終えて総合研究1号棟の講義室に戻り、後半は九工大の学生・大学院生による講義です。まずは 回路設計 です。回路設計は、仕様を検討する → データシートを読む → 回路図を描く → 基板(PCB)のレイアウトを設計する という流れで進みます。例として示されたのは、第3回でも使った Raspberry Pi Pico の GPIO ピンで LED を点灯させる、いわゆる「Lチカ」の回路。回路設計CAD「KiCad」で描いた回路図と、それを基板に落とし込んだレイアウトの完成図が紹介されました。
そして、実際の回路設計・基板設計の話で強調されたのが、「とにかくデータシートを読む!!」 ということ。データシートとは、部品ごとの「説明書」のこと。スライドでは実際の電子部品のデータシートを例に、回路図も基板レイアウトも、まずはそれを読むところから始まることが示されました。
— 揺らして、確かめる。
続いては 振動試験 の講義。衛星の構造設計は、構造設計 → 共振 → 構造体の評価 → 振動試験 という流れで進みます。
テーマは 共振。ブランコを決まったタイミングでこぐと、揺れがどんどん大きくなる――あの現象です。物体にはそれぞれ揺れやすい振動数=固有振動数 があり、その振動数で揺さぶられると大きく揺れて、壊れてしまうこともあります。
衛星の振動試験では、まずコンピュータで固有振動数を計算しておき、実物に 弱い振動 → 強い振動 → もう一度弱い振動 の3回、振動をかけます。最初と最後で固有振動数が変わっていなければ、構造は壊れていない、というわけです。
最後は講義室から試験室へ移動し、振動試験装置で 実際にアルミの板を揺らしてみる デモンストレーション。衛星そのものより、板のほうが共振のようすを目で確かめやすいからです。「試験中は試験機に近寄らない」という注意を守りながら、講義で聞いたばかりの共振や固有振動数の話を、目の前の揺れで確かめました。
衛星は、つくって終わりではありません。確かめて、はじめて宇宙へ送り出せる。自分たちと年の近い学生が、本物の衛星をつくり、試し、打ち上げている。その姿を間近に見られたことが、この日いちばんの収穫でした。